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数グラムの差が経営を左右する。セントラルキッチン自動化の新しい選択肢

数グラムの差が経営を左右する。セントラルキッチン自動化の新しい選択肢

「最新の機械を導入したのに、なぜ現場には今もこれほど多くの人手が必要なのか」
「人手不足で配合変更すら徹底できず、原価管理に頭を抱えている」
外食チェーンの効率化を支える要、セントラルキッチン。

野菜を切る、肉を加工するといった調理の工程には、すでに専用機が導入されています。一方で、その先にある詰める・運ぶ・仕分けるといった工程は、今もなお多くの現場で手作業が中心です。

調理の機械化は進んでいるのに、なぜその先の自動化は進みにくいのか。
そこには、扱う食材の多様さやレシピの頻繁な改廃といった、食品製造業界特有の壁がありました。

今回は、さまざまな業界で現場に合わせた設備づくりを手がけてきたロボットSIer・松本鉄工が、セントラルキッチンの実態と産業用ロボットによる解決策についてお話しします。

セントラルキッチンの盲点。なぜ「加工」の先だけが人手のままなのか?

チェーン展開する外食企業にとって、セントラルキッチンは効率化の要であり、自動化が進んでいるように思われがちです。しかし現場に目を向けると、工程によって機械化の度合いに濃淡があることがわかります。

特定の作業は驚くほどスムーズに自動化されている一方で、そのすぐ隣では今も多くのスタッフが並んで手作業を続けている。その背景には、これまでの食品業界における設備のあり方と、技術的な難しさという2つの壁がありました。

厨房機器メーカーとロボットSIer、それぞれの守備範囲

セントラルキッチンが設備の相談をする際、まず窓口となるのは厨房機器メーカーです。
彼らは野菜を刻む、肉を練るといった特定の加工を一点で完結させる専用機のプロ。「食材を投入すれば、自動でカットや攪拌(かくはん)されて出てくる」という単一工程の自動化については、すでに完成された技術を持っています。

しかし、その後の工程は別です。流れてきた食材をトレイに並べたり、袋に詰めたり、次工程へ搬送したりといった工程間を繋ぐ動作を産業用ロボットで自動化するノウハウは、厨房機器メーカーの守備範囲の外にあります。

検討する企業側も「自動化=調理機器(加工機)の導入」というイメージが強いため、既存のメーカーが扱えない梱包・搬送工程は、自動化の空白地帯として手作業のまま取り残されてしまうのです。

メニューの多様さが阻む、万能な機械の不在

もう一つの大きな障壁は、扱うメニューが多種多様であり、標準化が難しい点にあります。
たとえば、おでんの数種類の具材をパックに詰める作業と、チンジャオロースのミールキットを袋詰めする作業では、ロボットがつかむ対象の形状もサイズも、柔らかさも大きく異なります。

「これ1台あれば全ての詰める作業に対応できる」といった汎用的な量産機を作るのは難しく、どうしても現場ごとのオペレーションに合わせた個別設計が必要です。

このような一品モノへの対応は、画一的な製品を広く普及させたい大手メーカーにとっては効率が悪いため、この分野を専門とするメーカーが育ちにくい構造が続いてきました。
梱包・搬送の個別設計に対応できるメーカーの不在が、今も人手に頼らざるを得ない現場を多く残している要因の一つです。

原材料高騰という難題。シビアな原価管理を設定で支える

原材料費の高騰と深刻な人手不足を背景に、自動化の導入を本格的に検討するセントラルキッチンが増えています。
かつては現場の工夫や努力で補えていた数パーセントの原価変動も、今や経営を揺るがしかねない重みを持ち始めています。

しかし、いかに緻密な管理計画を立てても、それを現場のオペレーションで完璧に実行するのは容易ではありません。人手に頼る工程が多いからこそ、管理と実態のわずかなズレが生じてしまいます。

この構造的な課題を解決するための選択肢として、今、ロボットが注目されているのです。

数グラムの積み重ねが利益を守るための絶対条件になる

原材料価格が右肩上がりに推移するなか、原価を一定に保つための指示は日を追うごとに細かくなっています。「にんじんを5グラム減らす」「肉の配分を数グラム調整する」といった、グラム単位の指示が日常的に行われる現場も少なくありません。

利益を守るためには不可欠な判断ですが、難しいのは「チーム全員にその変更を瞬時に、かつ正確に徹底させること」です。数人、数十人のスタッフが並ぶラインでは、一人ひとりの感覚の差や伝達ミスを完全に無くすことはできません。

数百、数千食と積み重なれば、数グラムの誤差は無視できない損失にふくらみます。これをロボットに置き換えれば、設定を変更するだけで全ラインの基準が即座に、かつ均一に書き換えられます。

個人の技量や伝達状況に左右されず、管理側の意図を数字通りに現場へ反映できることが、ロボット導入の大きなメリットです。

人手に依存し続けるリスクと投資判断の転換

これまで多くの現場では、多様な人材がそれぞれの働き方で作業を支えてきました。しかし、近年の賃金水準の上昇や、雇用に関連する法制度の変化、さらには採用・教育にかかる工数の増大など、人を介した運用コストはかつてないほど高まっています。

スタッフの入れ替わりが発生するたびに必要となる教育コストや、多様な言語・背景を持つ方々への意思疎通の難しさなど、現場を維持すること自体の難易度が上がっているのが実態です。人手による運用は、もはやかつてのような低コストな選択肢ではなくなりつつあります。

「ロボットは高額」という印象だけで判断するのではなく、人を雇用し、教育し続けるための累積コストと並べて比較する。そうしたシビアな視点での投資判断が、これからのセントラルキッチン経営において重要になっているのです。

メニュー改修のムラをなくす。自動車業界のモデルチェンジ対応をセントラルキッチンへ

多店舗展開を支えるセントラルキッチンにおいて、安定した稼働を続ける主力メニューの自動化はすでに一般的です。その一方で、期間限定のフェア商品や店舗向けのミールキットなど、数ヶ月単位で中身が入れ替わるラインでは、今もなお多くの工程を人手に頼っています。

工程自体はほぼ同じなのに、なぜ自動化が進まないのか。そこには「短期間で仕様が変わるラインに、専用の大型設備は入れられない」という投資判断の壁がありました。

期間限定メニューや店舗向けキットに手作業が残る理由

各店舗へ配送する小分け袋の詰め作業などは製造個数が膨大ですが、その作業をスタッフが並んで行っているケースは珍しくありません。なぜなら、数ヶ月単位で期間限定のレシピが切り替わり、それに伴ってパッケージや細かい工程も変化し続けているためです。

主力製品のように年間を通して同じものを作り続けるラインであれば、専用の自動化設備を導入してコストを回収できます。しかし、頻繁にメニュー改廃が起こるラインでは、そのたびに高額な専用機を買い換えるわけにはいきません。

「どうせ数ヶ月で終わるから、今回も人手で回そう」。こうした判断の積み重ねが、高負荷な手作業の現場を残す要因となっています。

設備の入れ替えではなく、プログラムと部品の微調整で対応する

メニュー改廃のたびに高額な設備を買い換える必要はありません。解決のヒントは、松本鉄工が自動車製造の現場で培ってきた設備改造の技術にあります。

自動車業界では数年ごとのモデルチェンジが不可欠です。数ミリの形状変化でもロボットにとっては別物となるため、ラインを新設するのではなく、手先(ハンド)の交換やプログラムの書き換えで既存設備を活かすノウハウが磨かれてきました。

この知見は、セントラルキッチンの現場にも応用可能です。味付けが変わる製造工程は人が担い、形が変わらない梱包・搬送はロボットが担う。メニューが切り替わる時期には、プログラムを微調整して対応することで、変化に強い現場を最小限のコストで構築できます。

導入を失敗に終わらせない。コストを抑え、設備を使い続けるための割り切り

ロボット導入を検討する際、多くの方が気にされるのが「本当に元が取れるのか」という点です。現場でお話を伺うと、必要以上に高いハードルを設定してしまい、自らコストを押し上げているケースも少なくありません。

投資を無駄にしないために必要なのは、現場の状況に応じた素材と運用の割り切りです。
食品製造ならではの制約を守りつつ、いかに過剰なコストを削ぎ落としていくか。松本鉄工がお客様にお伝えしている、現実的な導入の考え方をご紹介します。

食材が触れない場所は塗装鉄でいい。ステンレスとコストの適正な関係

食品製造の設備において、設備由来のリスクとして特に注意を払うべきなのが、サビによる異物混入です。しかし、設備のすべてをサビに強いステンレスで揃えようとすると、製作コストは鉄を使用する場合の2倍以上に跳ね上がってしまいます。

そこで私たちが提案するのは、素材の使い分けです。

食材が直接触れる部分や水が常にかかる箇所にはステンレスを、一方で食品が触れないロボットの土台や周囲のフレームなどは、鉄にサビ止めの塗装を施した塗装鉄を採用する。
こうした線引きを現場ごとに細かく行うことが、導入コストを抑え、現実的な投資に収めるためのポイントになります。

ちなみに衛生面においては、人の出入りによる雑菌の持ち込みリスクをロボットで代替できるという点も、見逃せないメリットの一つです。

導入後の変化にも対応。最終的には自社で運用できる体制へ

お客様から「別の業者に設備を入れてもらったが、次第に使わなくなってしまった」というお話を伺うことがあります。
メニューの改定で設備が対応できなくなった、あるいは些細なトラブルで停止した際に自分たちで直せず放置してしまった、といったケースです。

こうした事態を防ぐため、松本鉄工では納品後の変化を見据えた運用を提案しています。
設計からプログラミングまで自社で一貫して手がけているため、メニュー変更の際には既存設備を別用途へ転用させることも可能です。

メンテナンスについてもお客様の体制に合わせて柔軟に対応しています。
保守契約はもちろん、調整ノウハウの共有まで、現場の体制に合わせたサポート。「導入して終わり」ではなく、現場の状況に合わせて設備を動かし続けるための、現実的な協力体制を共に築いていきたいと考えています。

まとめ|工場全体の一新ではなく、まずは一工程の自動化から

セントラルキッチンの効率化において、加工の先にある梱包・搬送の工程は、まだ手作業が多く残されている領域です。

原材料費や採用コストが高騰するなか、松本鉄工が提案しているのは、工場全体を一新するような大規模な投資ではありません。自動車製造の現場で磨かれた設備を変化に合わせるノウハウを応用し、まずは一工程から着実に作業負荷を軽減していく、現実的な自動化の形です。

私たちの役割は、単に設備を納品することではありません。導入後の調整やメンテナンス方法をお客様と共有し、最終的には自社で運用を完結できる体制づくりをサポートすることです。

「自社の現場に、どうロボットを組み込めるのか」。そんな検討段階の疑問から、まずは気軽にご相談ください。