「多品種少量生産だからできない」は思い込み?ロボットSIerが見てきた自動化の現実
「うちは多品種少量生産だから、自動化なんて関係ないよ」
「職人の腕ありきだから、ロボットには置き換えられない」
これは、ロボットSIerである松本鉄工が、情報収集の場や商談の席で多くの経営者から、実際に言われる言葉です。
整然と並んだ機械が同じ製品を作り続ける、「自動化=大量生産」というイメージが製造業に根強く残っているため、いろいろな種類を少しずつ作る現場は対象外だと考えられがちです。そのため多くの企業においては自動化について相談する機会自体が、なかなか訪れません。
しかし、お話を聞き、工場を拝見すると自動化の余地が多分に残されているケースは多くあります。
今回は、さまざまな業界で現場に合わせた設備づくりを手がけてきた松本鉄工が、「多品種少量生産(少ロット)だから」という思い込みの正体と、実際の自動化事例についてお話しします。
なぜ多品種少量生産は自動化と縁遠いと思われているのか

自動化・省力化は大量生産の会社のためのものだと考える経営者は多いものです。背景には、根強い自動化のイメージと、見過ごされがちな言葉の定義があります。
規格大量生産時代のイメージが今も残っている
まず、根強く残っているのが、規格大量生産時代から続く自動化のイメージです。整然と並ぶ機械が同じ製品を作り続けるという光景は、高度経済成長期に主流だった生産方式そのものです。
日本のロボット業界もこの時期に発展し、テレビなどで生産の様子が取り上げられる機会が増えました。この高度経済成長期の製造現場を知る世代ほど、ロボットに対して規格大量生産時代のイメージを強く持つ傾向があります。
自動化による規格大量生産を心がこもっていないものと捉え、職人の手仕事こそが価値だと考える会社も少なくありません。
また、売上の大半を稼ぐ主力ライン以外は、最初から自動化の対象から外してしまうケースもあります。ある飲食関連の会社では、「主力製品は完全に自動化しているけれど、工程が毎回変わる季節限定品は自動化できない」と考え、そもそも自動化の問い合わせすら検討していなかったケースもありました。
多品種少量生産の定義は、実はあいまい
多品種少量生産という言葉の定義そのもののあいまいさも、自動化を妨げる要素となっているようです。世の中の製品の多くは突き詰めると、ほとんどの製品が多品種少量生産だと言えます。
自動車のオプション選択やパソコンのカスタムオーダー、さらにはハンバーガーショップのピクルス抜きまで。仕様の組み合わせで一つひとつ違う製品を作っているのが現代の製造業のリアルだからです。
現場が「うちは多品種少量生産だ」と言うとき、実は明確な個数の基準があるわけではありません。売上の大半を稼ぐ主力製品に比べて、生産数が少ない限定品やスポット商品のラインを指しているケース。または、絶対的な主力製品がなく複数の製品で売上を分け合っているようなケースがほとんどです。
多品種少量生産という言葉が指す範囲は思いのほか広いものです。そのため、一概に生産の自動化を諦めるのは早計かもしれません。
多品種少量生産の現場で見えてきた自動化の余地

生産工程を細かく分けてみると、材料投入や加工にも自動化できる部分が見えてきます。製品ごとに仕様が変わるために自動化が難しいと考えられがちな工程ですが、人が材料を運ぶだけの動作や、検査・梱包のように製品が違っても共通する作業には、見落とされがちな部分が残っています。
ここからは、松本鉄工が実際に手がけた事例を見ていきましょう。
人の手待ちが多いプレス間搬送を機械化する
まず紹介するのが、重い鉄板を運ぶ作業者を、ロボットによって過酷な手待ち作業から解放した事例です。
多品種少量生産で扱う鉄板の厚さや大きさが毎回変わるため、自動化は難しいと言われていました。しかし、工場を見せてもらい各工程をひとつずつ確認していくと、2台並んだプレス機の間を人が行き来し、加工済みの鉄板を次の機械へ運んでいる作業が見つかりました。
軍手をはめて重い鉄板を抱えて運ぶのは、腰に大きな負担がかかる作業です。さらに鉄板が厚いほど加工はゆっくりで、鉄板をセットしてボタンを押した後はプレスが終わるのを待つだけの時間が長く続きます。
実際に働く時間は短いのに負担が大きい搬送工程をロボットに置き換え、人件費の削減と作業者の負担軽減を同時に実現しました。
毎回変わる材料にツールチェンジャーで対応する
次に紹介する事例は、同じ工場で今度は高速プレス機への材料投入が、ハンドの付け替えだけでロボットがこなせるようになったものです。
高速プレス機への材料投入は、注文に応じて投入する材料の形状や大きさが日によって変わるため、ロボット導入までは人の手に頼るしかありませんでした。松本鉄工は4種類の材料に対し、形状の近いものを束ねて2種類のロボットハンドで対応しました。
用いたのは、ロボットの脇に工具のようにハンドを並べておく仕組みです。「今日はA」と材料を指示すれば、ロボットが自分でハンドを装着して投入します。使う材料が変われば、翌日は別のハンドに付け替えるよう、ロボットに指示を出します。それにより、材料の前に人が張り付いていた投入作業が、ボタンを押す程度の労力で済むようになりました。
目視検査をカメラに置き換える
人の手に頼っていた検査の工程も自動化は可能です。ある企業では、検査をすべて人の目で行っていました。どんな製品であっても検査は欠かせない工程ですが、目視に頼る限り人手が必要となります。しかし、製品の種類を問わず行う検査項目であれば、多品種少量生産であることは自動化の障害になりません。そこで「検査の精度を上げたい」というご要望をもとに、カメラ検査の導入を提案しました。
傷や汚れ、形状の異常といった規格に満たない製品を、カメラが自動でNG品として仕分ける仕組みです。製品ごとに仕様が変わる多品種少量生産の企業でしたが、検査基準自体はどの製品にも共通していたため、自動化が実現できました。
重量基準の梱包を完全無人化する
つきっきりだった計量作業を、ロボットの導入で完全に無人化したのが、ある食品会社の事例です。食材を作業者が箱に詰め、量りに乗せて重さを確認。規定の重さに届かなければ手作業で食材の量を調整し、できあがった箱を次工程へ運ぶことを繰り返す。人がつきっきりになる工程でした。製品も重さもその時々で変わるため、人の目による判断から離れられなかったのです。
そこで、松本鉄工では投入された食材を自動で計量するロボットの導入を提案しました。規定重量に達すると供給を止め、箱を排出して次の段ボールを自分でセットする仕組みです。これによって人が関わらない、無人ラインに生まれ変わりました。
工場診断で思い込みを確かめてみる

自社の現場に自動化の余地があるのか、その思い込みを解く一番の近道は、客観的なプロの目を入れることです。
松本鉄工では、エンジニアが実際に現場へ足を運び、ヒアリングと視察を行う「工場効率化診断」を実施しています。製造工程をひとつひとつ確認しながら、自動化できる箇所を探していく内容です。
提案ができないと判断した場合は、資料の作成や交通費を含め、費用は一切かかりません。
「うちは絶対に自動化なんて無理だ」と確信している経営者の方ほど、一度現場を見せてみてほしい、というのが松本鉄工の本音です。
実際にエンジニアが現場を訪れると、搬送や梱包など、ロボットが肩代わりできる工程が見つかることは珍しくありません。
「本当に自動化できないのか」を確かめるところから、気軽にご相談ください。
まとめ|「うちは関係ない」を一度問い直す

「多品種少量生産だから自動化は無理」という考え方は、同じ型のものを大量に作っていた、ひと昔前のロボットのイメージが強いからかもしれません。
しかし、ロボットの技術が進んだ今、その都度違うものを作るラインに機械を合わせていくのは、決して特別なことではなくなっています。言葉の定義が広く、ほぼ全ての製品が当てはまる現代だからこそ、その一言で諦めてしまうのは本当にもったいないことです。
工場全体を一新するような大掛かりな投資は必要ありません。まずは手待ちの多い搬送、あるいは共通の検査や梱包など、「一工程だけロボットに任せてみる」ことから始めてみませんか。
自社の現場にどう組み込めるのか、気軽な気持ちでご相談ください。
ご相談はホームページ一番下の問い合わせフォーム入力、または電話よりよろしくお願いいたします。