工場効率化診断はなぜ生まれた? 見積もり前の工場が抱える判断材料の壁
「自動化したいが、どこから手をつけていいか分からない」
「近くに来ることはない? 帰りでいいから、ちょっと工場に寄ってくれないか」
人手不足や人件費の上昇を受け、工場の自動化・省力化を検討する製造業は増えています。ところが、どの工程の自動化から手をつければいいのか、いくら投資すれば元が取れるのかが分からないまま、検討が止まっている工場も少なくありません。
ロボットSIer・松本鉄工にも、冒頭のような声が数多く寄せられてきました。その声に応える形で、2024年7月から提供しているのが「工場効率化診断」です。今回は松本鉄工が、サービスが生まれた経緯と中身、利用した企業の反応についてお話しします。
見積もりを頼む前に、多くの工場がつまずいている

自動化の検討は、見積もりを頼む手前で止まってしまうことがあります。対象の工程が定まっていなければ、見積もりそのものを依頼できないからです。まずはつまずきの正体と、診断サービスが生まれた背景から見ていきます。
見積もりは「自動化する工程が決まっている」ことが前提
自動化の見積もりは、自動化する対象の工程が決まって初めて作れます。ロボットSIerは工場で工程を確認し、どの設備でどう自動化するか構想を練ってから金額を算出するためです。
ところが「どこからやればいいか分からない」段階では、依頼すべき工程が決まらないまま、社内での検討だけが続き、時間が過ぎていくでしょう。
工場効率化診断には、これまで自動化に取り組んでこなかった企業からの依頼が多く寄せられており、国内で高いシェアを持つ部品メーカーや、大手食品メーカーから依頼が届いたこともあります。
「ついでに見に来て」という相談が増え、診断サービスが生まれた
工場効率化診断は、見積もりの手前で止まっている工場の相談に応えるために生まれました。
工程が決まっていない工場からの相談は、冒頭の声のように、出張のついでに立ち寄ってほしいという形で届くのが常でした。費用を払うわけではないから、わざわざ来てもらうのは申し訳ない、という遠慮からです。松本鉄工は依頼のあった企業をリストにまとめ、出張の行き帰りに立ち寄るようにしていました。しかし相談が増えるにつれて、一社一社に合わせた対応では限界が見えてきたのです。
一方、見積もりの前に行う構想は、ロボットの選定から実効性まで考え抜く、専門性の求められる工程です。それにもかかわらず、松本鉄工ではそれまで見積もりに構想の費用を含めていませんでした。
工場をきちんと見てほしい企業と、構想を一つの仕事として届けたい松本鉄工。双方の思いを形にしたのが、工場効率化診断です。
必要なのは「いくらかけて、何年で回収できるか」

設備投資を決めるとき、経営者が知りたいのは「どこに、いくらかけて、何年で元が取れるのか」という点です。工場効率化診断では、問いへの答えを次の3点の資料にまとめて納品します。
- 3D CADによる構想図面
- 概算見積もり
- 投資回収試算表
ここからは、資料ができるまでの過程と、3点の中身を紹介します。
工場全体を見て、効果の出やすい工程を選ぶ
診断では、松本鉄工のエンジニアが工場にお伺いし、材料の投入から完成品の梱包まで、すべての工程を確認します。製品が複数ある場合は、製品ごとにラインや順番を一つずつ見ていき、許可が得られれば写真や動画も撮影します。
通常の見積もりでは工程を指定されるのに対し、診断では工程の選定自体を松本鉄工が担うのが特徴です。工場全体を見たうえで、取り組みやすく効果の出やすい工程を提案できるのが、診断ならではの強みです。
構想図面は3D CADで作成し、どのような設備になるのかを立体的に示します。導入後の姿を具体的に思い描けることは、最初の一手を決める手がかりになります。
投資回収試算表なら、経営者も現場の責任者も判断できる
3点の資料の中で、最も喜ばれているのが投資回収試算表です。
試算表では、設備導入によって削減できる人件費や、増やせる生産数、増える電気代などをヒアリングにもとづいて数値化し、何年で投資を回収できるかを示します。これは、売れ行きの季節性や、在庫になるリスクも加味した数字です。これまでの試算では、回収期間はおおむね3~5年の範囲に収まっています。
約8ページの詳細な試算には、経営者がひと目で判断できるA4一枚の要約を添えています。詳細版は、銀行への融資の相談や補助金の申請にも活用できると好評です。
現場の責任者が導入を上申するときには、説得力のある資料が求められます。そのため試算表は、社内の意思決定にそのまま使える形で納品しています。
依頼から納品までは1カ月以内が目安
工場効率化診断は、依頼から納品までおおむね1カ月以内で完了します。工程を指定される通常の見積もりでは1~2カ月かかることもありますが、診断では松本鉄工が工程を選べます。効果が出にくい工程や、難易度の高い工程を無理に構想する必要がない分、時間を短くできるのです。
現地調査のあと、松本鉄工は対象の工程を決めて、構想図面と概算見積もりを作成します。続いて、対象工程の人件費などを尋ねるヒアリングシートをお送りし、返送された内容をもとに試算表を仕上げます。
判断するのは、あくまで発注元自身

工場効率化診断は、設備を売るための手段ではありません。価格の決め方から、提案の伝え方、納品後の関わり方まで、発注元が納得して判断できることを大切にしています。
「安すぎて怖い」という声から、価格を見直した
ある企業からは、「安すぎて、最初は依頼をためらった」と打ち明けられたことがあります。サービス開始当初は20万円(税別)+交通費で提供していましたが、価格の安さが理由の分からない不安を招き、あとで高額な設備を売りつけられるのではないかと感じさせていたそうです。
寄せられた声をきっかけに、松本鉄工は価格を40万円(税込)+交通費に見直しました。あわせて試算表の内容も拡充した結果、引き合いも増えています。安心して依頼してもらうには、価格にも根拠が必要だったのです。
診断費用と交通費は、松本鉄工に設備を発注すれば受注額から差し引かれるため実質無料になります。自動化・省力化の提案ができないと判断した場合は、費用は一切かかりません。発注しなかった場合も、納品した資料は稟議や融資、補助金の申請に使えます。
「なぜこの工程なのか」にも、費用対効果と安定稼働の見込みで答える
提案を受けた企業から、「こちらの工程を自動化するのではだめなのか」と聞かれることがあります。松本鉄工は、選んだ理由を試算にもとづいて説明しています。
vある工場では、先方が気にかけていた工程も試算したうえで、別の工程を提案しました。気にかけていた工程は作業が複雑で、ロボットの費用がかさみ、回収までの期間が長くなる見込みがあったためです。不良品が出たり、設備が短時間止まって作業が中断したりするおそれもありました。提案した工程は流れが安定しやすく、生産数の増加と人件費の削減の両面で効果を出しやすいと判断したのです。
説明を聞いた担当者は、「ボトルネックはなんとなく分かっていた。でもまずは、工場全体をプロの目で見てもらいたかった」と話しています。選んだ理由まで示すことで、企業は提案を自分の判断材料として受け取れるようになります。
資料を渡したあとは、企業のペースに委ねる
工場効率化診断では、資料を納品したあと、松本鉄工から発注を促す連絡はしません。判断にかかる時間は、企業ごとに違うと考えているからです。
納品した資料に、使い方の制限はありません。構想図面と概算見積もりは、他の設備会社への相談や、社内での比較検討にも使えます。見積額が変われば、試算表の数字を置き換えるだけで回収期間を計算し直せる仕組みです。
診断後1年ほどご連絡のなかった企業から、「予算が取れたので、発注します」と一報が届いたこともあります。資料をもとに社内の稟議や融資の手続きを進めており、急かされることなく自社のペースで検討を重ねた結果でした。
まとめ|自動化の第一歩は、判断材料をそろえること

自動化の検討が止まっている工場に足りないのは、見積もりではなく、どこに・いくらかけて・何年で回収できるかという判断材料です。
v工場効率化診断は、工場全体を見て効果の出やすい工程を選び、構想図面・概算見積もり・投資回収試算表の3点で、経営判断の土台をそろえます。導入するかどうか、いつ、どこに頼むかを決めるのは、資料を受け取った企業自身です。
費用は40万円(税込)+交通費です。松本鉄工が自動化・省力化の提案をできないと判断した場合は一切の費用がかからず、松本鉄工に設備を発注した場合は診断費用と交通費が受注額から差し引かれます。
「何から始めればいいか分からない」という段階こそ、工場効率化診断を活用するタイミングです。まずはお気軽にご相談ください。